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加盟の際の基礎知識

17.物件探索・立地評価

パンフレット内容の見方の留意点は、以下の通りである。

立地選定・物件探しのポイント

加盟する業種・業態にもよるが、有店舗業態の場合は、店舗の立地選定は大変重要なことである。なぜなら、立地条件は、企業の努力で変更は難しいのである。開業後、「こんなはずではなかった!」と嘆かないためにも、しっかりと立地を見極める目をもっていただきたい。

店舗立地基準の理解

まず、自身が加盟を希望するチェーン(業態)の「立地基準」をよく理解することが必要である。店舗立地基準の理解があいまいであると、物件探索の依頼はもとより、決められた期間内に物件を探せないばかりか、立地評価も正しく下すことができない。
図表3-3は立地基準の事例である。マーケット条件、設備条件など、満たさなければならない条件が簡潔に列挙されている。これらの条件を自身のチェーンや業態に当てはめてしっかりと理解していただきたい。

図表 ある弁当チェーンの立地基準
出店エリア 1都3県(東京・千葉・埼玉・神奈川)
東京23区(うち中央区・千代田区・港区など都心のオフィス街を除く)
人口密度 半径500m圏居住人口1万人以上・労働人口5千人以上
半径750m圏居住人口2万人以上・労働人口1万人以上
営業時間 24時間
物件条件 給排気口必須・室外機設置スペース・看板設置
電気容量(電灯15~20KVA 動力25~33KW)
都市ガス35¢以上(プロパンも可)
水道直結で20φ 排水100φ
天井の高さ2700mm以上

加盟希望者自らが行う立地評価の方法とポイント

フランチャイズ・ビジネスの場合、単独で開業する場合と異なり、立地評価や売上予測は大半のフランチャイザーが行ってくれる場合が多い。しかし、だからといってフランチャイジー側が何もしないでよいというわけではない。統計解析を使った難しい評価方法はフランチャイザーに任せるとして、フランチャイジー側では、むしろより一層お客様に近い視点での立地評価が必要になってくる。そのポイントは次の通りである。

①立地評価の鉄則

立地は“空間”をトータルにとらえる概念である。空間という広がりをとらえる場合、その構成要素は「点・線・面」の3つの次元に分けられる。この3つの次元はどれが欠けても立地の実態を正しくとらえることはできない。
立地評価の鉄則は「マクロから入りミクロに到達すること」であり、最初から物件(ミクロ)に溺れてはいけまない。商圏(お客様)の側から物件を見ていくことが重要である。立地評価はまず、面(商圏評価つまり対象顧客がどれだけいるか)をおさえ、線(動線評価、お客様が近づきやすいか)に入り、点(地点評価)に到達する流れが基本となる。

②面・線・点でトータルにとらえる

最初は「商圏」評価である。ここでのポイントは、加盟しようとしているチェーンがターゲットとする顧客のライフスタイルや今後の動向を知ることが中心になる。その商圏内に新たな店舗が成立するだけのマーケットボリュームがあるのか、業態コンセプトに合ったマーケットなのかを実地調査と統計データでチェックする。実査では商圏内を徹底的に歩く(車の場合は実走する)ことが重要である。統計データは労をいとわず役所や商工会議所などで収集する。
次は「動線」評価である。周辺商圏や街区内での物件の位置や動線の向いている方向が重要である。お客様は物件に近づきやすいか、途中に動線を分断する要素(バリア)はないか、競合店との位置関係はどちらが有利かなどを実査する。この時、動線をつくる大事な要素である集客施設(マグネット)の有無やそれへの動線の続き方をチェックすることも忘れてはいけない。
また、同じ動線でもその中身がポイントである。道路の情報をみる場合、単なる通行量の多さだけでは不十分で、自身の業態がターゲットとする車種・通行速度・同乗者の人数などまできめ細かく観察することが大切である。
3番目が「地点」評価である。加盟しようとするチェーンの標準フォーマットでは30坪の物件が必要なところに、いくら「商圏」評価や「動線」評価がよくても、15坪の物件では話にならない。「少々狭くてもなんとかなるさ」と先走って物件を契約しても、後で後悔するのは目に見えている。また、それに加えて物件自体の視認性はよいか、道路付きはよいか、車のイン・アウトはしやすいか、といったミクロな視点での判断も重要である。物件がよく見えるということは、単にチラシをまく以上に長い目でみて大きな広告効果があるからである。

以上の3点を具体的には、次のような視点で判断することになる。

①商圏:『面』でとらえる

  • 事業が成立するだけのマーケットボリュームが存在するか
  • 事業の性格にあったマーケット特性を持っているか
チェック項目 収集方法
・商圏人口・世帯数及び伸び率 住民基本台帳・国勢調査
・人口ターゲット比率(年齢別) 住民基本台帳・国勢調査
・昼間人口 国勢調査
・居住形態(持ち家・借家など) 国勢調査
・所得水準 地域経済総覧(東洋経済新報社)
・家計支出水準 家計調査年報
・貯蓄水準 地域経済総覧(東洋経済新報社)
・地元購買率 消費購買行動調査(県、市町村)
・通勤通学先 国勢調査
・自家用車保有率 地域経済総覧(東洋経済新報社)

②動線:『線』でとらえる

  • 候補地の商圏内での配置は問題ないか
  • 候補地は商圏内の動線に沿っているか(その動線の太さは太いか)
  • 商圏内のお客様は候補地に近づきやすいか(周辺に障害物はないか)
  • 候補地と競合店の位置関係はどうなっているか
チェック項目 収集方法
・場所の分かりやすさ 実査・現地ヒアリング
・商圏内の消費者動線の方向 地図読み取り・実査
・中心(マグネット)からの店舗位置 地図読み取り・実査
・動線に対して車線の面する方向(順または逆) 地図読み取り・実査
・商圏分断要因(バリア)の存在 地図読み取り・実査
・店前通行量(歩行者・車両)と道路の性格 実査・道路交通センサス
・競合店数 電話帳・業界リスト・実査
・競合店と比較した場合の立地の優位性 実査
・他に競合店が出る可能性の有無 実査

③地点:『点』でとらえる

  • 物件自体は当該事業に適用できる規格(大きさ・形)か
  • 物件自体の視認性はよいか
  • 物件自体の道路付きはよいか
チェック項目 収集方法
・店前障害物の有無 実査
・視認性 実査
・角地か一面か 実査
・間口 公図・実査
・地形 公図・実査
・車のイン・アウトのし易さ 実査
・道路との段差 実査
・駐車場の確保(同一敷地に可能か) 実査

④立地評価にはバランス感覚が大事
以上のように立地をとらえると、よい立地とは『①自店のターゲットとなりうる顧客がたくさんいて、②それらの人たちが近づきやすくて、③目に止まりやすく入りやすい立地』とシンプルに表現できる。駅前が良くて住宅地はダメとか、ロードサイドのほうが駅前より良い、といった二者択一の問題ではない。それぞれのチェーンの業態コンセプトにあった「良い立地」というものがあるわけである。
立地評価で最も大事なことは、お客様の目でみた“バランス感覚”である。動線の悪さや車の入りにくさを物件の広さでカバーしようと思っても、お客様は不便なことをすぐに見抜いてしまう。「あの店は広くてゆったりしているけれども、行きにくいから・・・」となってしまう。点・線・面のどの要素も基準を満たした上で、いずれかの項目が突出して良いのなら問題はないが、基準に満たない要素を別の要素でカバーしようとしても立地評価では通用しない、と考えていただきたい。

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